発達障害の話


 

発達障害の話
2010年10月


助手: 私は、たまに友達から「お前はKYだ」って言われることがあるんですが、博士、どう思われますか?
博士: KY? 漢字が読めないか?
助手: ええ、確かに”疾病”を”しつびょう”って読みましたが、今回はその話ではなく、”空気が読めない”、っていう意味で言われているようなんです。こないだも、お葬式の場で、つい吹き出してしまって、ひんしゅくをかってしまったことがありました。
博士: 葬式の場で、笑ってしまうのはいかんな。他にもあるのか?
助手: ええ。髪を切った女性に、つい「その髪型、おかしいね」と、思ったことを言って怒られたこともありました。素直に、真実を述べただけだったんですけどね。
博士: それは怒られるな。特に女性の場合は、そう思っていなくても「似合っているね」と言ったほうが良い。
助手: だめなんですよね。頭に浮かんだことを話さずにはいられないし、ウソもつけないんです。
博士: それは、発達障害の一種かもしれんな。
助手: えー? 発達障害って。自分はそれなりに学校も出てますし、就職も何とかできてるんで、知的な障害があるとは思えませんが。
博士: 君の場合は知的障害ではないだろう。
助手: じゃ、何の障害なんですか?
博士: 一口に発達といっても3種類ある。まずは、知能で、これが障害された場合、知的障害と呼ばれる。また、運動の発達に障害があると肢体不自由などと呼ばれる。そして、もう一つ、社会性の発達に障害がある場合で、アスペルガー症候群などと呼ばれるケースがある。
助手: アスペルガーですか? それって、どんな病気ですか?
博士: まずはっきりしておかなければならないのは、アスペルガー症候群は、一般的な意味で言う「病気」ではない。病気ではなく、むしろ性格や個性といったもので、治療するという言葉も適切ではない。
助手: え? 治療しないって、それでも障害なんですよね。
博士: 他人の気持ちを読むことが出来ず、集団でルールに従って良好な人間関係を築くことが苦手じゃ。従って、会社勤めなどをする際には確かに障害になる。しかし、一人で黙々とする作業、芸術家でも科学者のような仕事の場合には、特に障害とならないこともある。その人を取り巻く、時代、社会背景により状況は異なる。
助手: なるほど。仕事を選べばいいわけですね。
博士: しかし、実際問題として、現代社会において、他人の気持ちを理解せず、また、集団のルールに従わずに生きることは出来ないじゃろう。従って、治療ではないが、社会生活をより快適に過ごすために、学習なりリハビリをしてもらう必要がある。
助手: なんか、結構あてはまりそうですね。こういう子供たちには、どのような指導をすれば いいのでしょうか?
博士: 急な予定変更に不安を感じておるから、事前にスケジュールをきちんと説明しておくと良い。また、刺激が多すぎると集中できなくなるから、活動の目的に応じて空間を物理的に区切ってやる方法もある。また、得意分野と不得意分野がはっきり分かれていることが多いので、なるべく得意分野を活かしてやる指導が必要じゃ。オタクのような子が多いが、無理やり興味の幅を広げる必要はない。ただ、人の話を遮って自分の知識を披露するなどトラブルにならんようにする社会的技能をみにつけさせることが必要じゃ。
助手: 社会的技能ね。あいさつとか、その場の状況や相手に合わせて話すこと、自分も苦手ですね。 
博士: 相手の目を見て話すこと。話の内容にあった表情をすること。はっきりと話すこと。自分だけがしゃべり続けないこと、などに注意して、日頃から訓練を積み重ねる必要がある。
助手: なんだか、それって、子供だけじゃなくて、社会人にも必要なことですよね。
博士: そうじゃ。こういう障害は決して特別な子供だけの話ではない。大人にもあてはまる。また、こうした障害は、排除すべきものではなく、単に一つのマイノリティとして受け入れる社会の寛容性も必要じゃ。実際、こうした人たちは集中力が抜群であり、一定の分野で画期的な仕事を成し遂げている人が多い。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ガリレオ・ガリレイ、グラハム・ベル、ベートーヴェン、織田信長、ビル・ゲイツ、アインシュタイン、ゴッホ、トーマス・エジソンなども高機能自閉症、ないしアスペルガー症候群の可能性があると言われている。
助手: すごい名前が並んでいますね。社会の側も優秀なマイノリティを受容することが試されているわけですね。私も、早く他人に理解されるようになって、結婚もしたいですね。
博士: そうじゃな。まずは、髪型を変えたことに気づいたら、「似合いますね」と言うんじゃぞ。いいな!!
助手: 早速練習してみます。「えーっと、博士はKY、つまり、髪型良いです。似合ってますよ!」
博士: うーん、わしの場合、したくてこんな髪型にしとるわけじゃない。やっぱり君はKY、つまり、気持ちが読めないじゃ。もう相手にしてられん。KYしてなさい。
助手: え? 最後のKYは何ですか? 気持ち良くしてなさい、ですか?
博士: いや、勝手にやってなさい、じゃ・・・



今回のお話は、以下を参照させていただきました。



※「自分を変えたい人 自分で治したい人のためのページ」後藤健治氏

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