冬の話

 

2013年 1月

 

 

助手:

博士、冬のお話ですか。確かに、前任地タンザニアではとりあげなかったテーマですね。

博士:

熱帯の滞在が多かったから冬はテーマにはならんかった。

助手:

明日の予報も雪、とのことですね。当地はマイナス30℃になることもあるそうですから寒さ対策は重要ですね。

博士:

ここ数年は暖冬が続いており、マイナス20℃程度のようじゃが、それでも、熱帯の気候に慣れた我々には、相当応えるな。

助手:オタワは風が強いですよね。マイナス10℃でも、風が有るときには体感マイナス15℃以上という感じですね。
博士:確かに。実際、天気予報にも"Feel like何度"、という項目が記載されている。

助手:

最初に来た頃に、外をジョギングしてみたんですが、マイナス15℃で風もあったので、顔も手も冷たくて凍傷になるかと思いました。

博士:

この寒さでもジョギングしているカナダ市民を多く見かけるが、冬は十分な対策をしとかんといかんな。寒さ対策もそうじゃが、視認性の良いウェアを着ることも重要じゃ。

助手:

なるほど。車に轢かれないように、ということですね。夕方4時過ぎには暗くなってしまいますからね。

博士:

そうじゃ。雪もあるし、道路は滑りやすい。車道を走らなければならないこともあるから、車から見て夕方や夜間でも視認性の良い、例えばライトを反射する素材の生地が張り付いているウェアを着るとか、点滅するライトを腕や足に巻くという工夫が必要じゃ。

助手:

街灯が少ないので、車から見ても視野が悪いですよね。

博士:

冬の間も、自転車で雪の上を走っているカナダ人は多い。雪だまりで道幅が狭くなっているところに、自転車も通るから、車を運転している人は十分に注意してもらいたい。

助手:

冬は交通事故に注意、ということですね。後、やはり風邪は多いようですね。

博士:

インフルエンザが流行しておる。これは、カナダだけの話ではなく、日本を含めた北半球全体の傾向で、昨年より流行が早い。カナダ保健省は、インフルエンザ予防法チェックリストというのを早くから出して啓発をしておる。※


助手:

予防法チェックリストですか。具体的にはどんな内容ですか?

博士:

まずは、1.予防接種を受けましょう。じゃ。

助手:

インフルエンザワクチンですね。でも接種してもインフルエンザになったとか、風邪引いた、とか結構聞くんですけど。実際どうなんですかね。

博士:いろんなデータが発表されており年により異なるが、成人の場合インフルエンザの阻止率は70%、小児の場合は5割を切るという報告もある。厚労省のホームページを見ると、65歳以上の健康な個人の阻止率は45%と記載されている。
助手:え?、日本の厚労省のHPで、そんなに低い数字ですか? それじゃあ、受けたくないなあ。

博士:

インフルエンザで死亡する原因は知っておるか?

助手:えーと、恐らく、こじらせて肺炎になって、という感じですか?
博士:そうじゃ。インフルエンザは多くの場合、薬を飲むこともなく、自然に治癒する。しかし、年によっては年間1万人近くが肺炎等重症化して死亡しているが、それがインフルエンザと関係している超過死亡と考えられている。ワクチンじゃが、死亡についての阻止率は80%程度、と上記HPでも記載されている。

助手:

そうなんですか。わかりました。そして予防法チェックリストの2番目は何ですか?

博士:

2.手を頻回に洗いましょう、じゃ。具体的には、石けんとお湯で少なくとも20秒間洗う。特に、食前・食後、トイレ後、咳・くしゃみをした後、汚染されている可能性のある物に触れた後などじゃ。

助手:

インフルエンザも”接触感染”というお話でしたね。

博士:

うむ。そうじゃ。手洗いが必要なのは日本で大流行のノロウイルス感染症ばかりではない。風邪・インフルエンザでも必須じゃ。そして3番目は同じく接触性感染予防目的で、3.手で顔を触らない、じゃ。ウイルスは目・鼻・口から侵入する。そして、4番目は咳エチケットじゃ。くしゃみ・咳をする時は腕・そで(袖)にする、というものじゃ。

助手:

手の中でくしゃみをするのではなく、”そでにする”、ですか。

博士:

そうじゃ。しつこい”インフルエンザさん”を遠ざけるには”袖にする”ことが肝心じゃ。

助手:

・・・、インフルエンザの略称はフル(Flu)だけに、って、まだ話を終えるには早いですが。
博士:

5番目は、ドアノブ、電気のスイッチ、電話、キーボードなど室内の表面を常に清潔にして消毒をする、じゃ。

助手:

そうすると、最近流行のタッチパネル式スマートホンも注意ですね。

博士:

そうじゃ。銀行のATMなどもタッチパネル式が増えておるようじゃから、携帯用アルコールベースの手指消毒剤をいつも持っていると良いな。そして、最後の6番目に挙げているのは、具合が悪ければ会社・学校を休む、ということじゃ。

助手:

そうか。カナダ人はそうでもないかもしれませんが、日本人の場合、病気してても中々休まないですね。マスクして、熱出しながら仕事していたりしていて。
博士:自分だけではなく、他の人に広げない、という視点がかけている。休校にすることで、地域のインフルエンザ流行拡大を防げた、という報告もある。

助手:

私なら、雪でも降ればすぐにでも休みますけどね・・・。インフルエンザについては、わかりました。他、冬に注意すべきこと、ってありますか?

博士:

当地に来て驚いたが、空気の乾燥が酷いな。湿度が10%を切ることもあった。

助手:

そうですね。皮膚がかさかさです。日本の冬も乾燥していましたが、当地に来て久しぶりに保湿用のクリームを使いました。

博士:

トロント大学医学部皮膚科のDr. Sandy Skotnickiは、次のような話をしている。顔や体を洗いすぎる、洗顔、石鹸の使い過ぎなどは、寒い気温や風と共に、乾燥肌を作る。病気とも関係し、甲状腺の病気や糖尿病の人は乾燥肌になりやすいとのことじゃ。冬の乾燥肌は侮れず、赤み、痒み、つっぱり感、特にシャワーを浴びた後には著明じゃ。ひどくなると肌が硬くなり切れて出血することもある。しかし生活習慣を少し変えることで乾燥肌を防ぐことができる、と言っておる。

助手:

具体的にはどうすれば良いのですか?

博士:

シャワーの時間を短くする。10分以上のシャワーを避け、熱い温度を避ける。風呂とシャワーではシャワーを選ぶ。保湿ローションをシャワー後すぐ、まだ肌に湿気があるうちに塗る。などじゃ。
助手:

短いシャワー。加湿器も必要ですね。

博士:乾燥している時期はそうじゃが、湿度を上げすぎてはいかん。
助手:それはまたどうしてですか?
博士:冬は室内に長期間こもっていることが多いし、気密性の高い当地のような家の場合、カビが問題になる。カビやイエダニにアレルギーのある場合には、対策が必要になる。
助手:
いたずらに湿度を上げれば良い、というわけではないのですね。どんな対策が必要ですか?
博士:シャワーや調理のときに換気扇を使用し、湿度と臭気を抑える。カーペットにはHEPAフィルター掃除機を使用し、ペットアレルゲンとイエダニを減らす。ペットと遊んだ後は手を洗う。冬のウイルスへの曝露を抑えるため顔に触れないようにする。温水(約55℃)でシーツやパジャマを洗濯してイエダニを殺す。寝室にカーペットやラグ、植物を置かず、ペットを入れない。枕やマットレスにアレルゲン予防処置をする。クリスマスツリー(生木)は屋内に入れる前に水をかける。その他すべての飾り付けからダストを確実に取り除く。加湿器または除湿器を使用し、屋内の湿度を30~40%に維持する。カビ臭い場所やカビが成長する危険性のある場所を特定する。などなどじゃ。
助手:確かにこの時期、部屋がかび臭いことありますね。気をつけます。
博士:君の家は年中かび臭い感じじゃがな。それと、年末年始と宴会が続いたようじゃが、食べ過ぎてはいないか? 心持ち太ったように見えるが?
助手:おいしい物ざんまい、飲み過ぎもあって、2kgほど太りました。ビッフェ形式だと、つい摂りすぎちゃうんですよね。
博士:

カナダ保健省は、パーティの多いホリデーシーズンの食事の仕方もホームページに掲載している。

https://www.theglobeandmail.com/life/video-nutrition-basics-tips-for-staying-on-track-with-your-diet-this/

カナダの典型的なクリスマス料理とそのカロリー

上段左から、Brussels sprouts(346Cal), Mashed potatoes(206Cal), Roll(144Cal),

Cranberry sauce(105Cal), Turkey(419Cal), Gravy(44Cal), Stuffing(300Cal), Eggnog(320Cal), Wine(242Cal),

Fennel Salad(183Cal), Christmas pudding(722Cal)

 

助手:そんな細かい、というかお節介な注意も載せているんですね。どんな内容ですか?
博士:まあ、君のように自分をコントロールできない人も多いし、肥満は今や国家的問題じゃからな。まずは、1.規則正しい食事。一食抜いたり不規則な時間で食べることは、むしろ食べ過ぎにつながる、としている。そして朝は多めに、その後は少量ずつじゃ。

助手:

一日2食だと、お相撲さんの食事、というわけですね。

博士:

うむ。2番目としては、食事に彩りを加えること。具体的には皿の半分は、カラフルな野菜や果物で埋めろ、としている。これがカロリーを減らす一番の方法である。

助手:

なるほどね。独身の自分の食卓は、白とか灰色一色とか、確かに彩りが少ないですね。

博士:

灰色一色って、どんな食事じゃ。そして、3番目としては、この時期にしか摂れない料理(ターキー等)を楽しむこと。しかし、量に気をつける。いつでも食べられるポテトチップスやチョコレートは避けることじゃ。

助手:

パーティを主催する側からいうと、ポテトチップスなどは見た目が多く見えて楽ですがね。まあ食べる場合には遠慮するようにします。

博士:

4番目としては、飲み物のカロリーにも気をつけること。アルコールを飲む場合には、水・炭酸水などを一緒に飲むようにすることじゃ。

助手:

ついつい、アルコールを飲み過ぎちゃうんですよね。水も一緒に飲む、ですね。でも、話を聞くのが少し遅かったかですね。もうすっかり・どっぷりカナダ料理を堪能してしまいまして、このお腹ですね。

博士:

カナダのお正月は静かじゃが、君の場合、クリスマスも正月も盛大に祝うんじゃろうから、遅すぎることはない。

助手:確かに。12月はクリスマス、1月はお正月、2月は豆まき、3月はひな祭り、4月は桜祭り・・・・。いつでもお酒は飲めますね。
博士:日本全国酒飲み音頭か、君は!?
助手:博士、よく覚えていました。バラクーダですよね。でも当地の場合、これも古い歌ですがアダモの「雪が降る」を愛唱しています。
博士:君の好きな歌を聞いているのではない。でも、それでわかった。君が風邪でもないのに安易に仕事を休む理由が。
助手:え? そりゃまたどうしてですか? 「雪が降る」が何か関係しているんですか?
博士:雪は降る。あなたは来ない、ってな・・・・。
助手:なるほど、それで・・・。皆様2013年もよろしくお願いします。


Healthy Canadians

カナダ医療情報(在カナダ日本国大使館)



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