健康診断の話、2

2009年 2月

助手:博士、だいぶ暑くなってきましたね。最近、停電が多いので暑さで眠りが浅くなり、昼間つい、うとうとしてしまいます。
博士:君の場合、昼間うとうとは以前からじゃが、これからますます暑くなるとのことじゃから注意せんといかんな。
助手:暑いので正月という感じがしませんでしたが、当地でも年末・年始に風邪の人は多かったようですね。
博士:うむ。日本では本格的なインフルエンザシーズンが始まった。ここタンザニアも、風邪の患者が多かったようじゃな。
助手:前のお話で、風邪などの病気にならないためには日頃から運動をするなど体力をつけるということが重要でしたが、健康診断を受けておくことも意味がありますか?
博士:健康診断は重要だ。日本では昨年からメタボ検診も始まった。
助手:メタボね。私も最近、お腹の周りに脂肪がついてきているので心配です。ウェスト85cmが基準でしたよね。
博士:

内臓脂肪が多くの生活習慣病の原因になっており、その目安として臍周囲の測定が行われている。一般に言われているウェストサイズではない、おへその位置での周経を測定する。現行では男性85cm、女性90cmを基準としている。だが男性の場合厳しすぎる、女性の場合は緩すぎるとの指摘もあり、数値は今後見直される可能性がある。

助手:アメリカなんか、85cmどころか、2メートルを超えるのではないかというような巨体がうろうろしていましたよね。
博士:

2メートルはオーバーじゃろう。じゃが、確かに米国で肥満は大きな問題となっている。

助手:

それに比べれば、タンザニアの人はそれほどでもないように見えますけど。

博士:マサイ族などは運動量が多いから肥満は少ない。しかし、都市生活者は運動量が少ないため肥満も多くなっている。某大手企業に勤務している職員の検診を行ったところ、半数は肥満だったとのデータもある。まだまだ意識は低いようじゃ。
助手:まあ、アフリカの周辺地域を見れば、食べられるだけ幸せということかもしれませんね。
博士:うむ。ここではメタボよりも感染症の方が問題じゃからな。
助手:そうすると健康診断についても、感染症のチェックを行うんですか?
博士:うむ。結核検診としての胸部レントゲン、肝炎チェックとしての血液検査(ALT、AST)、HIV検査、寄生虫検査としての便検査は必須じゃな。
助手:なるほどね。国、地域によって検診の意味合いが異なる、ということですね。
博士:そうじゃ。日本の場合には、ガン、生活習慣病(メタボリック症候群)発見が主たる健診の目的じゃが、こうした途上国では感染症発見が主体となる。
助手:使用人さんの健康診断も行った方が良いですかね。
博士:うむ。コック、ベビーシッター、運転手などは健診の結果をみて雇用するのが適当じゃ。
助手:使用人さんが結核をもっていたら危険ですよね。
博士:結核もしっかり治療を行えば感染性はないが、当地では中途半端な治療しか行っていないケースが多い。古い結核、瘢痕程度であれば問題ないが、活動性の結核があれば雇用を続けることは出来ない。すぐに治療させる必要がある。また、B型肝炎のキャリアも多いと推定されている。HIVについては、成人の罹患率は7.2%(2005年)と発表されている。
助手:肝炎やエイズは移りますからね。
博士:エイズは簡単には移らんから、それをもってして雇用しないとの理由にはならない。ただ肝炎のキャリアの場合には、特に肉体的接触の多い乳幼児のシッターとしては向かない。唾液や血液の接触の可能性がある。
助手:

シッターさんだと、確かにキスしたり、口移しで食べ物を渡したりという可能性がありますね。 

博士:
まあ、エイズの場合でも今は早期にしっかりと治療を始めれば長生きできる。また当地の場合、多くの病院では無料で投薬してくれることになっておる。検査やカウンセリングを無料で行っている施設もある。もし使用人検診で発見された場合は、そこをきちんと説明してあげることが肝心じゃ。
助手:
そうですね。検査しっぱなしではいけないですよね。どこの病院で健診出来ますか? 
博士:
まあ上記の項目程度であれば、地元の病院で可能じゃ。リージェンシー病院(※)で職員検診を行っている企業もある。
助手:
我々自身の健康診断はどこでやれば良いですか?
博士:
そうじゃな。当地では限界がある。特に日本人に多い消化器系の検査については、日本で行った方がよいじゃろう。
助手:
消化器系というと胃のレントゲン検査などですか?
博士:
そうじゃ。胃内視鏡検査、50歳以上に勧められる大腸内視鏡検査、子宮ガン検診、乳ガン検診などは、帰国時に行うと良い。海外から予約出来る病院も少なくない。
助手:
せっかくの帰国だから、結構忙しいんですけどね。
博士:いや、せっかくの帰国時だからこそ、遊んでないで、きちんと体のメインテナンスに励む必要がある。健康診断の結果についても、日本にいる間に医師からきちんと説明してもらうのが理想じゃ。戻ってきて改めて結果を見たら、再検査と書いてあった、では遅い。
助手:
いやー、帰国時は忙しいんですよね。久しぶりに友達と会うんでゆっくり居酒屋あたりで日本酒を飲みたいし、温泉にも行きたいし、他にもいろいろとおいしいものも食べたいし。ラーメン、卵かけごはん、いくら丼、牛丼、マクドナルド、ケンタッキー・・・・
博士:
そんなに食べて健診受ければ、間違いなくメタボだな。
助手:
いやー、めたぼくない。
博士:
? 落ちきれていないな。今回の君のしゃれはあまり、けんしんせんな。
助手:
?? かんしんせんな、ですよね。停電続きで、お互い十分に睡眠がとれていないため頭が十分に働いていないようですので、今日はこのへんで引き上げましょう。














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