インドの話

2003年9月

助手:博士、インドですよ。ニューデリーです。
博士:「博士と助手」も遂にここまで来たか。やはり暑いな。
助手:ええ、今年の日本は冷夏でしたからね。
博士:うむ。10年来の凶作に農家は苦しんでおる。
助手:デリーの場合凶作という話は聞いていませんね。
博士:その代わり、飲料水中の農薬残留の話が取りざたされている
助手:

新聞にも大分出ているようですが、そもそも、どういう話なのでしょう。

博士:

わしも最初からフォローしていたわけではないので在留邦人の皆様の方が詳しいが、そもそも2月に当地のNGOであるCSE(Centre for Science and Environment)が、飲料水に農薬が残留していると報告したのが始まりじゃ。そして、今回ミネラルウォーターばかりでなく、コカコーラ等のソフトドリンクにも残留していると報告した。

助手:

じゃ、ペプシコーラにしましょう。

博士:

いや。ペプシも同じじゃ。Pepsi、MountainDew、DietPepsi、MirindOrange、MirindaLemon、BluePepsi、7-Up、Coca-Cola、Fanta、Limca、Sprite、Thums Up、全てに含まれていた、としている。

助手:

コーラ、ファンタすてっき、なんて、あきれてられないですね。

博士:

何を意味不明な事を言っているんじゃ。大分デリーの暑さにやられたようじゃな。神経、内分泌系に有害とされるLINDANEがコカコーラの場合EU基準の35倍、日本では有害とされ禁止になったDDTがペプシでEU基準の16倍含まれていた、としている。

助手:

DDTですか。懐かしいですね。頭や体のシラミを駆除するために、ずいぶんと降りかけられたんですよね。

博士:

古い事を知っておるな。君はいくつじゃ。その他にも催奇形性のあるCHLOROPYRIFOSがミリンダレモンでEU基準の72倍、内分泌ホルモンを攪乱する作用のあるMalathionがコカコーラで139倍、ミリンダレモンでは196倍だったとしている。

助手:

マラ・チョンですか? 怖い。いかにも性ホルモンに影響が出そうな名前ですね。

博士:

おほん。マラチオンじゃ。ま、いずれにしてもインド、デリー周辺の水源事態の汚染が問題と考えられている。

助手:

一般家庭の庭でも、虫が怖いのでいやと言うほど殺虫剤を使っていますよね。こうした薬剤が土に染みこんで、水道水や地下水に混入している可能性もあるでしょうね。

博士:

そうじゃな。虫をとるか農薬をとるか、という究極の選択の部分もある。いずれにしても、この問題に関しては政府の強力な管理なくして解決はない。

助手:

博士。虫といえば、そろそろ蚊が増える季節になり、デング熱が心配になりますね。

博士:

お、さすが、インドネシアで鍛えられただけの事はあるな。

助手:

ジャカルタでは多かったですね。

博士:

デリーでも1996年には大流行した。1万人以上感染し、400人以上が亡くなっている。ここ数年は少なかったが。

助手:

今年はどうなんでしょう? 流行しますか?

博士:

昨年に比べて出足が早いようだ。昨年1年間で45例の報告だったが、今年は8月末の段階でデリー市内で少なくもと15例報告されている。

助手:

デング熱は治療法がないんでしたよね。

博士:

うむ。ワクチンや抗生物質もない。

助手:

それじゃ、怖いですね。

博士:

いや。それほど怖がる事はない。早期に医療機関を受診し、点滴などの処置を行えば重傷化したり亡くなったりする事はまずない。

助手:

症状は熱でしたよね。 

博士:

うむ。3日間38度以上の発熱があった場合には、腸チフスと共に、当地で疑うべき病気の一つじゃ。

助手:

腸チフスね。これも多いらしいですね。

博士:

そうじゃ。余程信頼できる店以外では生の物は食べてはいけない。チフス以外でもアメーバ等の寄生虫や食中毒菌も多いからな。

助手:

結膜炎も流行っていますね。

博士:

うむ。ウイルスによる流行性結膜炎と思われる。これは、感染者の手を通じて感染するので、患者に接触しない、自分が感染したら目を触らない、手洗いをよく行って、他人に感染させない、という事が重要だ。

助手:

挨拶の時は握手をしない。インド式挨拶が良いと新聞に冗談ぽく出ていましたね。

博士:

そうじゃ。インドで大事な事は、この挨拶につきる。

助手:

冗談ではないんですね。握手をしない、両手を合わせて・・

博士:

火を通した物だけ食べなさい、という食中毒予防の意味も含まれているからな。

助手:

え? それがインド式挨拶とどう関係していますか?

博士:

だってナマステじゃろ。生の物は捨てなさい、と。

助手:

・・・・うーーん。初回の話にしては、「落ち」のインパクトはちょっと弱かったですね。

博士:

君に批評してはもらいたくないが、今後とも読者の皆様のご批判には答えたいな。

助手:

それでは、みなさん。健康のために、ナマステ(^_^;)

 

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