医務官の話

2011年 10月

 

助手:

博士、医務官って、どこの国にもいるんでしょうか? 

博士:

米国大使館、英国大使館などでも医務官をおいているところもあるが、日本の医務官が一番多いようじゃな。

助手:

日本の医務官制度はいつごろから始まったのですか?

博士:

大正時代に始まった制度じゃが、当初は現地の医師の診療を受けることが困難な在外公館職員のための嘱託医として派遣されていた。

助手:

大使館員のための医者だったのですね。

博士:

基本はそうじゃが、医務室を設営し、大使館員や家族、在留邦人のみならず、稀にではあるが現地人も診察、さらに先進国の優秀な医学を日本に紹介することも行っていた。

助手:

そうなんですか。結構古い制度なんですね。

博士:

戦後は体制が変わったわけじゃが、なかなか医務官の派遣は認められなかった。やっと昭和38年になりマラリアが流行したナイジェリアに派遣されることになった。

助手:

その時も、在留邦人も診ていたのですか?

博士:

派遣の理由は、「地域に在勤する館員、邦人の生命及び健康を守るため」ということじゃったが、任地との関係もあり、実際はいろいろな制約がある。

助手:

任地との関係、というのは具体的にはどういうことですか?

博士:

南米、インドネシアなどでもそうじゃったが、日本人の多い地域では、現地の医療者にとって日本人は良い顧客であり、大使館や総領事館に勤務する医師が日本人を診察することは医師会が反対している。

助手:

なるほど、営業妨害、っていうことですね。

博士:

そうじゃ。実際インドネシアでは、医務官ではなく日本人会診療所の医師でも、表向きは現地人医師の下で診療している形をとっている。

助手:

なるほど、資格のある現地人医師の補佐を行っているという形で、処方箋なども書いているわけですね。

博士:うむ。そもそも、その資格、つまり現地の医師免許を与えられていないケースがほとんどじゃ。
助手:国によっては、医師資格をもらえる場合もあるのですか?

博士:

うむ。英国やシンガポールなどの場合、一定の数の医師のみ、相互主義によって、限定的に自国民の診療を特定の病院の邦人医師に許可している場合がある。

助手:

なるほど、日本国内でも英国人の診察を許されいる英国人医師がいる、ということですね。

博士:

そうじゃ。ただ大使館で勤務している医務官の場合、現地での資格は取得していない。

助手:

免許を持っていないわけですね。

博士:

大使館・総領事館というある意味治外法権の中で、限定的な形での医療相談が許可されているに過ぎない。

助手:

なるほど。大使館に行った時に、具合が悪くなれば診てもらえる可能性があるのですね。

博士:

そう都合よく病気になれればいいがな。まあ、医療相談は受けても問題ないことになっているから、現地の診療で不安な場合には、相談すると良い。

助手:

そうですか。医療相談っていっても、当地のように日本人の少ない地域では、そんなに数は多くないかと思いますが、外に、どんな仕事をしているんでしょうか?
博士:現地の医療事情を調査して、報告する、というのも仕事じゃ。

助手:

マラリアが流行っているとか、どこどこの病院が良いとか、ですね。

博士:

そうじゃ。全般的な医療事情、必要なワクチン、流行病の状況などを随時報告し、まとめて発表している。

助手:

大使館のホームページにある情報※ですね。
博士:

現地の大使館、さらには外務省のホームページでも在外公館医務官情報※として纏められておる。

助手:

いやー、日本大使館のホームページは知っていましたが、外務省のホームページは知りませんでした。凄いですね。世界中の情報がこの1ページに全てまとめられているのですね。いつからこんなページがあったのですか?

博士:

今の医務官が東京にいた時に始まったから、2002年からじゃ。当初は本として出版され、その後に外務省のホームページに掲載されるようになった。

助手:

なるほど、いろいろと外務省が批判されていたころに、その言い訳の一つとして始めた訳ですね。

博士:

・・・。どういう理由で始めたかは知らんが、領事業務の一つ、邦人安全のための情報提供という観点から始めたのは確かなようじゃ。本も何回か改訂されておる。

助手:

書籍版もあるのですね。

博士:

日本各地の公立図書館などに送られておるが、一般に市販はされていない。また、近年は情報の変化が激しいこともあり、ホームページ上での改訂を主体としておるようじゃ。
助手:
なるほど。当地なんかでも、あった病院が無くなったり、新しく病院が出来たりすることもありますからね。
博士:病院については、あくまでその地域で邦人が使用する場合、という観点からの記載じゃから、全てが網羅されているわけではない。また信頼性を保証しているわけでもない。
助手:先進国以外で、信頼に足る病院を探すのは難しいでしょうからね。
博士:そうじゃな。病院情報については、あくまで目安として考えると良い。
助手:
今度、旅行する時には、その前に目を通すようにします。
博士:旅行ガイドも必要じゃが、医務官情報も同時に読んで事前に知っておくことは重要じゃな。「出かける時は忘れずに!」じゃ。
助手:何ですか、それ。古くて誰も知りませんよ。1960年代から90年代にかけてアーノルド・パーマーと共に活躍し、ゴルフをメジャースポーツの一つとして認識させたジャック・ニクラウスのAMEXのコマーシャルなんか。
博士:・・って、十分詳しいじゃないか。
助手:いやー、子供の頃だったんですが。妙に言い回しが辺で、外人ってこんなしゃべりなんだと、印象に残ったCMでしたね。
博士:外人、って言う言い回しも、古いな。何より、当地では君が外国人じゃぞ。

助手:

そうですよね。なんの因果か、地球の果てに、こんな頭の薄い年寄りと一緒にいなきゃいけなくかったのか・・・

博士:

それは、お互い様じゃろ。何の因果でこんな、理解力の乏しい若いヤツと仕事をせんといかんのか・・・

助手:

もう、お互い、止めておきましょう。先日日本語補習校で講演をされた海外青年協力隊の塚根健司さんではないですが、我々も途上国に来て、多少なりとも支援に関わっている訳ですから。

博士:

そうじゃな。塚根先生の講演によるとタンザニアの子供たちに陰湿ないじめは少ない。容姿の違いでからかったりすることは少ないということじゃからな。

助手:

そう言っていましたね。私も博士の頭のことは、今後言わないようにします。

博士:

わしも君の能力不足は気にしないようにしたいもんじゃが、そういう訳にはいかん。奨学生制度で勉強しているタンザニアの中学生に負けないよう、君にも少しは努力してもらわんとな。

助手:

博士、それは酷いなあ。私でも小学生レベルの能力はあると思いますよ。

博士:

小学生ではなく、奨学生じゃ。スカラーシップじゃ。

助手:

ああ、”風と共に去りぬ”の主人公の

博士:

それはスカーレット・オハラじゃろ。スカラーシップ!!

助手:

ああ、”X-フィル”の女性捜査官の

博士:

それはダナ・キャサリン・スカリーじゃ。だんだん離れていくな。

助手:

いやー、博士何でも知っていますね。尊敬します。さすが、頭が薄くなるまで使っておられるだけのことはありますね。

博士:

もう言っておるな。髪の毛で物を考えているわけではない。”もっと中”の問題じゃ。

助手:あれ? 脳と言えば良いものを、またどうしてそんな風な持って回った言い回しなんですか。ひょっとすると、そろそろ?

博士:

そうじゃ。だいぶテーマから離れてしまった議論になってしまったが、テーマが医務官の話、タンザニアの話だけに・・・

助手:

もっと中、なかもと、が気になります、って?

博士:

まあ、そういうことじゃ。10月22日には、医務官主催で歯科の講演会※も予定されているとこのことじゃから、参加すると良い。

助手:

良い情報をありがとうございます。 


※世界の医療事情(在外公館医務官情報)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/

※参考:歯科講演会「口腔衛生と生活習慣病」講師:堤義親先生(外務省歯科診療所長)

 

 



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