蚊帳の話

2009年4月

助手:"かちょう"の話ですか? 
博士:そう。今日は、中間管理職のメンタルヘルスの話、じゃない。蚊帳と書いて、"かや"と読む。どこぞの首相ではないんだから、その位の漢字は読めんといかんぞ。
助手:ああ、"かや"、ね。モスキートネットと言ってもらえればわかったんですが。
博士:帰国子女か!?。まともな英語が話せないやつに限って、知ってる単語を出したがる。
助手:めんぼくない。留学経験のない純粋な日本人でした。それで、今日は蚊の話ですね。
博士:うむ。雨期が始まり、これからがタンザニアではマラリアの季節になる。
助手:でもマラリアは治療薬がありますよね。前の話で紹介いただきました。クソニンジンですよね。
博士:

そういう名前はよく覚えているな。ヨモギ科のクソニンジンから抽出されたチンハオスーじゃ。じゃが、最近、この薬に対する耐性がアフリカで問題になってきている。

助手:えー。また耐性ですか。昔クロロキンがマラリアの特効薬って言われていたのに、今は、全く効かなくなったんですよね。新薬、チンハオスーも効かなくなってきたんですか?
博士:

まあ、今のところ耐性の出現はチンハオスー単剤の場合のみじゃ。他の薬剤との合剤であるCoartemなどについては耐性の報告は無いから、全く効果が無くなったという訳ではない。

助手:

それじゃ、まだ心配ないですね。

博士:いや、合剤は高価で、アフリカの貧困層は安価な単剤を使っているケースが多いから、アフリカ全体にとってみると大問題になっている。
助手:そうですか。そうすると、やはり予防が第一ということで、かやの話になるわけですね。
博士:そうじゃ。蚊帳に耐性は生じない。ハマダラカの吸血は、夕方から明け方であるので、家の中で防御がたいへん重要になる。家に蚊が侵入しなければ、刺されることもなく、マラリアになることもない。
助手:蚊帳は日本では手に入りますか?
博士:いや。先日探してみたが、見つからなかった。その点、当地では安価で手に入る。殺虫剤であるペルメトリンを繊維に練り込んだ蚊帳、住友化学製のオリセットネットもある。
助手:殺虫剤が加えてあると、体に悪い、ということはないですか?
博士:気にするほどの量ではない。多少の影響は否定できないが、マラリアになるより良いじゃろう。アフリア全体で、2000万人の子供がこの蚊帳により命を救われたとのデータがある。しかし、貧困地域での蚊帳の配布はまだまだ不十分であり、その恩恵に浴していない子供が8000万人とされている。タンザニアの保健社会福祉省も5歳以下の子供のいる全ての家庭にこの蚊帳を配るプロジェクトを開始するところじゃ。
助手:マラリアはエイズの人がかかると、さらに酷いことになるんですよね。
博士:そうじゃ。免疫の低下しているケースでは治療に難渋する。政府も、HIV陽性者に、優先的に蚊帳の購入バウチャーを配るなどの支援も行っている。
助手:蚊帳って、いくら位なんですか?
博士:安いものであれば4000シリング(3百円)、殺虫剤を繊維に練り込ませたオリセットネットでも、ダブル用で8000シリング(6百円)程度じゃ。
助手:安いですね。
博士:それでも、買う余裕のないアフリカ人は多い。日に1ドル以下で暮らすタンザニア人は %とのことじゃからな。
助手:

そうなんですか。上の写真のような子供の笑顔が見られるといいですね。
博士:
うむ。蚊帳で皆の心が癒されることになれば、まさに、かやでケアだな。
助手:
温かいですが、無理矢理のしゃれでしたね。わたしなら、「蚊いや、だから蚊帳を」、って言いますが。
博士:
・・・言わん方がよかったな。
助手:
モスコーシねって、言えば良かったですかね。
博士:
モスキートネットか、そのしゃれは、だんだんきつくなるな。
助手:
おりいってねった、しゃれだったんですがね。
博士:
それって、オリセットネットか? もう、止めなさい!
助手:
まらりーや、ないですか。
博士:読者の皆様、申し訳ありません。もうお引き取りください。
助手:
蚊帳の話だからって、そんなに四角四面に考えなくてもいいじゃないですか。
博士:
きれいな落ちにしたかったんだろうが、残念だったな。タンザニアには丸い蚊帳もあるんじゃ。
助手:
え? 丸いのもあるんですか。まさに死角、しかくでした。

 












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